光触媒材料の構造と特性

アパタイトを被覆した二酸化チタン光触媒の特徴

光触媒は太陽光や蛍光灯から出る紫外線によって強力な酸化分解力を有するために、抗菌・消臭などの効果が得られ、地球環境や生活環境の浄化が期待され多くの研究がされている。アパタイトを被覆した二酸化チタン光触媒は以下のような特徴を有している。

  1. アパタイトはアルデヒド類などの有害ガスの吸着特性に優れ、光が当たらない夜間や光量が少ない場合でも有害ガスを吸着する。
  2. 光が当たると二酸化チタン表面のアパタイトに吸着している物質を二酸化チタン光触媒が分解するため、アパタイトは半永久的に物質を吸着する。
  3. アパタイトがスペーサーとなって、光触媒が直接に基材に接触しないため、基材への影響がない。

光触媒特性の調査

試料0.1gとメチレンブルー10ppm溶液5ccを試験管に取り、1時間暗室に放置した後、紫外線(強度:1.0mW/cm2)を照射して30分ごとにメチレンブルーの吸光度の変化から光触媒効果を測定した。

結晶構造

下図に示すように、XRDにより結晶性の高いアナターゼ型の二酸化チタンと、結晶性の低い水酸化アパタイトが確認された。また、Ca/Tiのモル比の増加に伴ってアパタイトのピークが増大し、アパタイト量が増加していることがわかった。

さらに、下図のEDX分析によると、TiとCaのイメージが一致することから、アパタイトは二酸化チタンの表面に析出しているものと考えられる。

SEMによる観察では、下図に示すように、アパタイトは二酸化チタンの表面に析出していることがわかる。Ca/Tiモル比が多くなると析出したアパタイトが二酸化チタン粒子を包み込んでしまう様子が観察された。

光触媒特性

下図からわかるように、暗室に放置するとアパタイトを被覆していない二酸化チタンにはメチレンブルーの濃度低下が認められないが、アパタイトを被覆した二酸化チタンはその被覆量に応じてメチレンブルーの濃度低下が見られる。

さらに、紫外線を照射すると、アパタイトの被覆に関係なくメチレンブルーの濃度低下が認められるが、Ca/Tiモル比が多くなると光触媒効果が鈍化することがわかった。

考察

二酸化チタン粒子の表面に溶液法によって容易にアパタイトを被覆できる。アパタイトを被覆した二酸化チタンは光が当たらなくてもアパタイトの吸着特性のためにメチレンブルー濃度を低下させる。

紫外線を照射するとアパタイトの被覆量にかかわりなく良好な光触媒効果を示したが、被覆量がCa/Tiモル比が一定以上になると、アパタイトが二酸化チタンを包み込んでしまうため、光触媒性能が低下することがわかった。